スペシャル座談会&対談

『月刊ドラゴンエイジ』創刊20年を記念して、人気作家のインタビュー企画をお届け!
第1弾は『デスマーチからはじまる異世界狂想曲』のあやめぐむ先生×『異世界のんびり農家』の剣康之先生によるスペシャル対談。
『ドラゴンエイジ』の人気コミカライズ作品を担当されているお二人に、コミカライズならではの魅力について伺ってみました!

  • あやめぐむ

    漫画家。コミカライズ版『デスマーチからはじまる異世界狂想曲』を本誌にて連載中。

  • 剣康之

    漫画家。『異世界のんびり農家』を本誌にて連載するほか、イラストレーターとして小説の挿絵なども手がけている。

小説から世界を図面に起こしていくことが
最初はちょっと苦労しました
(あやめぐむ)

――まずは『月刊ドラゴンエイジ』20周年ということで、本誌に関する印象や思い出をお聞かせください。

あやめぐむ(以下、あや) 『月刊ドラゴンエイジ』という雑誌の存在は、もちろん存じておりました!
 私がこちらでお仕事をさせていただくようになったのは、別の雑誌でお世話になっていた編集者さんからお誘いをいただいたことがきっかけです。そのとき本誌をいただいたのですが「学園異能バトルアクション系が多い」というのが印象に残りました。

剣康之(以下、剣) 『ドラゴンエイジ』の前身になった『月刊コミックドラゴン』を若かりしころに読んでいたので、馴染み深いです。年齢がバレてしまうかもしれませんが(笑)。その後継となる雑誌で連載をしているというのは光栄に思います。

――おふたりは連載が始まった当時、どのような思いがありましたか?

あや 『デスマーチからはじまる異世界狂想曲』は最初『エイジプレミアム』というWeb媒体での連載でした。いわゆる“なろう”がブームになる前の時代で、『デスマーチ』は当時では変わった文章構成の作品だったみたいです。「まずはコミカライズをWeb で試してみよう」という経緯だったかと。2015年くらいに『エイジプレミアム』が休刊して、本誌のほうへ移動する形になりました。

 僕の場合、当初は「オリジナルの話で漫画を」とのことで企画を進めていたのですが「もし、興味があれば」ということで『異世界のんびり農家』のコミカライズも勧められました。それで本作を読んでみたらこれがまた面白くて! お話をいただいたときに“なろう”そのものはチェックしていたのですが『のんびり農家』は読んだことがなかったんです。ですが、読んでみて、もうどハマりしました。「もう、これはやるしかない!」と思って、オリジナルの企画はポイっと捨てちゃいました。

あや ポイって(笑)!

 もはや一目惚れですね。それから、すぐに編集部のコンペに出すためのキャラを描いて、お仕事をいただきました。ただ『のんびり農家』は、他の作品とはちょっと一線を画すようなスタイルの文体で、とても引き込まれるのですが、これを漫画にするのは大変だなぁとも思いましたね(笑)。

あや 確かに、私もそれは思いました!

――『デスマーチ』のほうはいかがでしたか?

あや 私の場合もまずはオリジナルを、ということで考えていたのですが、「私の作風だとなかなか難しいかもしれない」とも考えていて。そんな矢先に編集さんから『デスマーチ』のコミカライズの企画をいただきましたので「やってみよう」ということになりました。以前はゲームのコミカライズをよくやらせてもらっていて、そのときは世界観や小道具といったものを資料として見せていただいたのでやりやすかったのですが、今回のように小説から世界を図面に起こしていくことが最初はちょっと苦労しましたね。原作者さんの考えているものに対して「これでいいのかな?」と思うことは今でもあります。

 あぁ、すごくわかります! 同じく小説をコミカライズしている人間として。

得られた設定を元に頭をフル回転させながら描く世界

――お互いの作品に対する印象を教えてください。

あや 『のんびり農家』は大変そうですよね。情報量がものすごい! あのエグいほどの情報量を文章から漫画にするのはかなり難しいと思います。コマ内に情報や補足が色々と入っていたりして、あれは本当にすごいと思います。

 僕も『デスマーチ』ではサトゥーにしか見えないARの情報とかをちゃんと表現しようと思うと「そもそもどういう情報が見えているんだろう?」とか考えるのが大変そうだな、と思いながら読んでいます。

あや あれは、漫画のほうでは「これだけの情報が見えていれば、読者さん的には大丈夫だろう」という塩梅で描いていますね。

 読者の人も混乱しないくらいの情報量で、かといって「ちゃんと原作を読み込んで描いていますよ」という部分も見せたい気持ちもありますし……本当に難しいですよね。個人的には『デスマーチ』14巻の黄金の猪王戦が印象に残っています。登場したアイテムや武器の描き方、それにARの情報とか、その前にも手下の魔族がどんな魔法を使っていたとか、それをきちんと表現していて「これ、大変だろうな!?」と(笑)。

あや 楽しかったですよ(笑)。サトゥーさんがやっと本気になって動きまくってくれましたから。

 サトゥーが本気を出すみたいなシーンはここまでないんですよね。序盤から始まって、大きい盛り上がりの場面でしたから、この戦闘の間に覚えたスキルも使ったりするので相当大変だったのでは?

あや 仕上げは大変でしたけれど、登場人物が普段よりも人数が少なめでしたので、作画だけは人生最速で早かったです。いつもは登場人物がすごく多いので。『のんびり農家』も登場人物多いですよね。種族や村が拡張されていく描写とかもありますし。あれって原作者さんと村の地図などを共有されていたりするのでしょうか?

 あれは書籍のほうの章扉を参考に。今の村がどんな感じになっているのかが描かれているので、それを参考にしていますね。

あや なるほど! 『デスマーチ』の場合、『デスマーチからはじまる異世界狂想曲 Ex』という短編集にそういったものが載っていました。

 というわけで、僕らはそういった設定を常に欲しながら、頭をフル回転させながら漫画を描いています(笑)。

あや 『のんびり農家』も急激に人数が増えましたからね。

 そうですね、貴族が出てきたり、中世ヨーロッパ風ファンタジーということもあって、権力闘争があったり、人間関係も複雑になっていったりするんですよ。そうなると、やはり人間関係の情報が欲しくなります。例えば、この伯爵と侯爵とは裏でどういう繋がりがある、とか気付くことがあると表現に幅が出てくるじゃないですか。同じ場所にいるとき、表情にちょっと親しみがあるとか……。ですが、知らないと無難に落ち着く方向で作画をすることしかできない。なのでネームの際にはできるだけ読み込んで「この描写は多分こういうことなんだな」というようなことを考えながら、さらにネームのお約束も詰め込まなければならないという。自分の頭のなかだけで100%作るときとは、また違う苦労がありますね。自分で作る場合には「ここは出さなくてもなんとかなる」とか計算が働いたりするのですが、原作小説がある場合は「読者の人はこう思っているだろう」とか「ここ気が付いているだろうから描いたほうが喜んでもらえるんじゃないか」とか考えてしまう。

あや はい、ありますよね。原作があるからこそ、読者さんの心情を先回りしてネームに落とし込もうとしてみたり。

 そこを汲み取ってもらえたりするとすごく嬉しいです。そういったところが原作小説のある漫画の喜びであり、楽しみであり、苦しみでもあると(笑)。

連載開始当初はどういったスタイルの
漫画にしていいのかをすごく悩みました
(剣康之)

初見で浮かんだ映像やイメージを元にネームを起こす

――コミカライズ特有の作業として、小説の文章からネームを起こされる際にはどのような工夫をされていらっしゃいますでしょうか?

 僕の場合はまず、原作小説をスマホなりなんなりで開いて文章を読んで、紙に落とし込むのですが、この場面でこの内容なら、これくらいのコマを割るだろう、と考えながら描いています。頭のなかで映像化して、書き留めるようなイメージですね。

あや 基本的には初見で読んだときに「こうなってるんだ」とか、頭に思い浮かんだ情景や構図は頭のなかに残しておいて、実際にネームを切るときに「うまく収まればいいな」と思いながら起こしていきます。うまくハマった場合はガッツポーズです。そういうシーンは満を持して見開きページになります(笑)。具体的にはムーノ市防衛線の話で最後にサトゥーさんが空に向かって矢を放った見開きのシーンなんかがそうですかね。小説のいいところはできるだけ落とし込みたいですね。

――連載当初から比べて、読者の反応に違いは感じられますか?

 『のんびり農家』に関しては、連載開始当初はどういったスタイルの漫画にしていいのかをすごく悩みました。今は読者さんのリアクションがわかってほっとしていますが、当時は受け入れられるのかが本当に心配でした。あや先生はいかがでしたか?

あや 私はあまり気にしていませんでしたね。反応に関してはもらえれば、もちろん嬉しいです。でも、例えばマイナスの感想があったとして「気にしてもしょうがない」と思ってしまうタイプなので……。

 なるほど、強いですね。

あや 自己完結している方なのかな?

最新のプラットフォームで読まれることが漫画にとっての最大の強み

――現在は電子書籍や縦読み漫画など様々な形態が増えましたが、現在の書籍、漫画業界についてはどのような思いをお持ちですか?

あや 紙媒体が電子になって、みたいなことですよね。個人的には、漫画というものが最新のプラットフォームというか、フォーマットで再生されていることが漫画における最大の強みだと思っています。今までは本という形が最新の情報媒体だったかと思うのですが、パソコンができて、Webブラウザで漫画が読めるようになって、今ではスマートフォンやタブレットでも展開できるようになって、今まで以上に色々な人に読んでもらえるようになりました。そういう意味では、どんな形であったとしても漫画というものは残り続けていくと思いますので、漫画の未来は明るいのでしょうか。もちろん、紙の漫画も好きです。装丁マニアですし、いつかは立派なハードカバーも出してみたいと思います! そういえば、漫画の制作環境もデジタル環境が普及してきましたよね。剣先生はどういう環境で描いていらっしゃいますか?

 僕は完全にデジタルです。『のんびり農家』が始まったころはデジタル環境でしたね。

あや 私も一部デジタルなのですが、もう少し時間を短縮したいなぁ、と思っていて。ただ連載をしながら環境を変えるのは難しいですよね。

 ペースも乱れますしね。僕の場合、ちょっと前までネームはノートに描いてスキャニングしていたのですが、最近ではスキャニングする手間も面倒になってしまって(笑)。

あや わかります(笑)!

 なので現在はiPadでネーム作業をしたり、デスクトップとタブレットで作業をする形に移行しました。

あや なるほど、いいなぁ。

 あや先生は違うんですか?

あや 私の場合、ネーム、下書き、ペン入れまではアナログです。でもつけペンではなくミリペンを使うようになりました。ただ集中線だけは、はらいがうまくいかないので丸ペンです。

 アシスタントさんはいらっしゃいますか?

あや 仕上げのときにお願いする方はいらっしゃるのですが、スキャニングするまでは全部ひとりでやっています。背景は誰かにお任せしてしまってもいいかもしれませんが……。

 僕の場合、背景は完全にアシスタントさんにお願いしています。CLIP STUDIO PAINTで作業をして、LINEでアシスタントの方とやり取りして「データはここにUPしたので、お願いします」というような感じで進めています。ですから環境としてはフルデジタルですね。

あや 私もスキャンのあとは同じような流れです。アシスタントさんにトーン貼ってもらうためにデータのやり取りをしたり。CLIP STUDIO PAINTは、使おうと思って買ったのですが、セットアップの時点からうまくいかず、不貞腐れてはや数年たってしまいました。液晶タブレットまで買ったのに!

 慣れるまでが大変というのはありますよね。

あや ですので、私はこれからもPhotoshopを使っていこうと思います! もう20年以上使い続けていますからね。

デジタル環境の導入によって広がったトーンによる表現

――おふたりともデジタルを導入されていますが、デジタルを導入したことで表現の幅に変化はありましたか?

 幅はむしろ変わらないようにしています。できるだけトーンでやったような感じとか、そういう部分の漫画らしさを残すようにしています。ですがトーン削りが一瞬で終わる、など作業的な意味では「もうデジタルじゃなきゃ嫌だな」と思うことはたくさんあります。

あや 私はデジタルを導入したことで表現の幅は広がりました。もちろん、トーンを使う場合でも「夕焼けだったらこのトーン」とかは決めていましたが、色々な種類のブラシを使って背景を作るようになってから、アナログっぽさは残しつつも幅が広がったからこそ、そこに“うまく載る”ような形で描いていきたいと思っています。

 たしかに『デスマーチ』の漫画を読んでいると、呪文とかブラシを使っている部分などを見て「トーンでやったらえらいことになるよな」と思うことはありますね(笑)。

あや そうかもしれません(笑)。でもアナログのころもトーンを重ね掛けして魔法のシーンとかは結構やっていましたよ。

 ありましたよね! 水面のトーンをうまく使ったりとか。

あや あります! 加工しがいのあるトーンを使ってとか。

 雲のトーンをあえて水のところに貼ってみたり。昔はよくやりました。デジタルだと直接「こういうエフェクトを入れちゃえ!」とできるので、工夫なんかはしなくてもよくなって、寂しいといえば寂しいのですが、やはりデジタルになって楽になったという方が大きいと思います。なにより、トーン代がかかりませんから!

あや そう! おかげで、どんなに重ね貼りしても塗っても大丈夫!! 多分、デジタルじゃなかったら『デスマーチ』も今ほど色は付いていなかったと思います。登場人物が多いので……。

 昔はトーン代だけで月に2~3万は飛んでいましたからね。

あや ひとりのキャラに2パターンの基本トーンとかも無理ですね。多分もっと省エネな感じになっているかと思います。あとなによりカラー! カラーはアナログだと少し苦手なので、カラーに関しては本当にデジタルにしてよかったと思っています。

 僕も今はもうアナログでカラーは塗りたくないですね。

今後の夢は「ドラゴンエイジ」オールスターズ!?

――20年前の自分にメッセージを送れるとしたら、どのようなことを伝えますか?

 「20年前に生まれた雑誌の『月刊ドラゴンエイジ』で連載することになるぞ!」と自分に伝えたら驚くと思います。

あや 私の場合、例えば20年後の自分からメッセージが届いたとしても受け取るかどうかわからないですね。なので20年前の自分に対してメッセージを送ったとしても、そのころの自分にそのメッセージを開封する自信があるのか? そういうまっすぐな人間かどうかもわからないので、なんて声をかけたらいいのかな? 2004年のデビューなので、まだデビューもしていないですしね。

 あ、デビューが近いですね。僕は1998年だったと思います。メインで小説の挿絵を描き出すのは2000年くらいだったかな?

あや それまでにアシスタントの経験はありましたか?

 知人の先輩作家さんに緊急で呼ばれたりはしていましたが、決まった作品のアシスタントに入る、といったような経験はないですね。気付いたら業界に飛び込んでいて、無我夢中で走っていたら、こうなっていたような感じがあります。

あや かっこいいです。

 かっこよくはないですよ。ただ夢中でした。

あや なるほど、自分でそういう道を選んでいたらいつの間にかその地点にいた、という感じなのでしょうか。私も20年、いろいろキツかったこともあるので、自分にあえて言うなら「頑張れ!」と言ってあげたいと思います。

――ちなみに20年後の目標があれば教えてください。

 20年後も『のんびり農家』を描いていたいですね。

あや 『デスマーチ』もまだまだ終わることはなさそうです!

 『デスマーチ』にしろ『のんびり農家』にしろ、まだ先は長い感じがしますよね。

あや そうなんですよ! 『デスマーチ』も10巻を突破したのに、やっとメインキャラが揃ってきたくらいで……。

 まだ最初の魔王との戦いが終わったくらいですよね。『のんびり農家』もまだ“なろう”の掲載分すら終わっていないんですよ(笑)。だからこそ、できるだけ長く続けたいなと思っています。

あや この世に絶対的なものはない! という価値観はありつつ、私も描き続けていられたらいいなと思います。

――20周年を迎えた『月刊ドラゴンエイジ』について、今後どのような展開を望まれますか?

あや 全作品をミュージカル化しましょう!

 ミュージカル!?

あや 『ドラゴンエイジ』で連載している作品が一堂に会するオールスターズのミュージカルを作って、全国で公演するんですよ! あとは映画! アニメ映画を作ってほしい! いずれにしてもオールスターズをやってみてほしいです。全作品の主人公やヒロインがわちゃわちゃ集まって、『ドラゴンエイジ』のドラゴンを倒すとか(笑)。

 僕は地味な話で恐縮なのですが、ずっと雑誌を続けてください。掲載媒体がなくなると困るので(笑)。

あや 本当に20年後も30年後も続けてほしいです。

 少なくとも、うちの子供が育ちきるまでは!

あや お父さんかっこいいです! 堅実が一番ですよ。

――20周年を迎えた『月刊ドラゴンエイジ』について、今後どのような展開を望まれますか?

あや ここまでインタビューを読んでいただき、ありがとうございました。この場を借りて読者の皆様にお礼を申し上げます。漫画を描いている私もそれを支えてくれる編集さんも日夜努力を重ねて尽力しておりますので、これからも10年、20年と『月刊ドラゴンエイジ』という雑誌が続いて、いつまでも読者の皆様の娯楽であってほしいと思います。

 インタビュー読んでいただいてありがとうございます。『のんびり農家』や『デスマーチ』、他にもたくさんの掲載されている漫画を読んでいただいてありがとうございます! 読者の皆様、今後もよろしくお願いします。